アメリカ不妊事情レポート-1
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ニューヨーク、ボストン、ロスアンジェルスで不妊治療を取材。2002.12月


不妊治療体験報告 in NY(1)

ニューヨークでは、ふたりの女性から話をうかがった。ふたりとも40代。
それまで仕事に専念していたふたりは、40才という年齢を前に子どもをもつということを真剣に考えるようになったという。けれど、いざ子どもを欲しいと思ったときには、なかなか自然に妊娠することは難しく、大学病院で不妊治療を受けた。

アメリカでは「40才を境に妊娠率が急激に下がる」と言う医師は多く、ふたりともその年齢の壁のプレッシャーを感じながら治療を続けた。
取材したときは、ふたりとも妊娠中だった。

Kさん マンハッタンの見えるアパートで、ホーム・バースを計画中

不妊治療体験報告 in NY(2)

 Nさん 2年間の治療の末に妊娠



Kさんの自宅は、ブルックリン・ブリッジのふもとにある高級アパートの10階。大きく開かれた窓からは、イースト・リバーの対岸にマンハッタンのビル郡が見える。この部屋で、Kさんカップルは自宅出産を計画している。
助産婦ミリアムさん
その日は、自宅出産を介助する助産婦のミリアムさんが訪問に来ていた。天井が高く、観葉植物がたくさん置かれた気持ちのいい居間で、夫もいっしょの健診がはじまる。助産婦はKさんのおなかを触診。ドプラーで胎児の心音を聞いたとき、夫のSさんはとてもうれしそうな表情になった。それから、妊娠中のからだの様子についてや自宅出産に向けての準備など、ディスカッションが続く。
ソファーでくつろいで話している風景は、まるで友人がお茶に呼ばれたときのような親密さ。ニューヨークで自宅出産を選ぶ人はそれほど多くないけれど、アメリカでも日本と同じように、近年、自宅出産を介助する助産婦が少しづつ増えてきて、現在マンハッタンには7名の開業助産婦がいるという。

Kさんは現在、40才。
「なかなか子どもを授からなかったので、夫とふたりで検査を受けることにしました。私のほうはとくに異常はなかったのですが、彼のほうの精子が少ないことがわかりました。通常、精子は5億個ほどあるのだそうですが、彼の場合は1億個ほどしかなかった。
医師に禁煙と、アルコールの禁止、そしてお風呂を禁じられました。彼はアメリカ人にしてはとてもお風呂好きで、毎日30分以上、新聞をもってゆっくりバスタブにつかるのが、楽しみな人なんですね。日本では男性不妊の場合でも、お風呂を禁じることはないと聞きましたが、こちらの医師は『精子は摂氏37度以上の温度に長時間さらされると、3日以内に死んでしまう』と言っていました。
それで彼は、好きなお風呂を3ケ月間がまん。精子は72日間で新しくつくり替えられるとのことで、3ケ月後に検査したところ、その数は3倍に増えていて、人工授精で妊娠に成功。私はそのとき39才。40才になると、妊娠率は急激に下がるということだったので、毎日注射をしてホルモンの状態を保っていました」 アメリカでは、不妊治療は最初からカップルで受けることが多い。Kさん夫婦も、カップルで受診。まず治療に関する説明会に出席し、そこで概要を聞いた。出席者はほかに4組ほど。日本の場合、治療中の毎日のホルモン注射は通院しなければならないが、アメリカでは自宅で自分で注射することをすすめている。ふたりは注射の仕方の説明を受け、パンフレットとビデオをもらった。

Kさんは以前からヨーガをやり、食事にも気をつけていたので、40才という年齢のことは気にならないという。妊娠経過も順調。これなら、かねてから希望していた水中出産も不可能ではないかもしれない、と思ったという。そんなとき、自宅出産を介助してくれる助産婦と出会った。 「私もお風呂が大好きですし、お湯につかることで陣痛が軽くなればと思うので、バスタブの中での水中出産を希望しています」
夫のMさんも、積極的に妊娠生活にかかわって、助産婦との健診や病院での検査にいっしょに参加している。

取材:きくちさかえ(2002年12月)

アメリカ不妊事情レポートINDEX

アメリカ不妊事情レポート、ニュヨーク-babycom

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1.NYの不妊レポート
不妊治療体験報告 in ニューヨーク
ニューヨークの二人の40代女性のケース

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アリス・ドマール教授 2.不妊医療 in ボストン
アリス ドマール教授に聞く

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高齢出産での出生前診断


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不妊治療や医療化した出産について
バーバラ カッツ ロスマン教授



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