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第1回特集

2002.12月babycomはアメリカ3都市で不妊治療に関する取材を行った。




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第7回:不妊医療レポート


ニューヨーク市立大学社会学教授
バーバラ・カッツ・ロスマン氏に聞く

出生前診断と揺れる母性

女性のからだと社会システム

代理母.....妊娠はサービスか?

産むことと育てることは
 別な問題


自分らしいチョイス

 2004/2.05
















不妊治療やそれにまつわる問題についても、ロスマン教授は、女性の立場に立った 視点から発言をしている。

「不妊治療を受ける場合、男性と女性がいっしょに検査を受け、治療を受けることも ありますが、妊娠し、出産をするという点で、ほとんどが女性のからだに起こること です。子どもを産むということにおいては、男性ではなく、女性が健康面でのリスク を負うことになる。それは考慮されなければいけないことです」

不妊は、ひとりの女性の個人的な問題である一方で、社会的な背景の中で女性が置 かれた立場が、ひとりひとりの女性たちを追い込んでいる面もあると言う。

「“女性”は、地域、国、地球など、それぞれのレベルで子どもを産むことを期待さ れている存在です。私たちは、子どもを産んで育てることが、女性らしさを体験でき る道であると、教えられてきました。けれど私は、女性は個人としての女性自身であ ると考えます。からだはすべてその女性の持ち物ですし、母親になることも国のため ではなく、すべて個人的なこと。不妊治療も、女性自身の責任において選択されるべ きだと思います」

不妊治療は、女性のからだを治療するという医学的な側面に留まらず、生殖テクノ ロジーの発達によって、受精卵や卵へその技術が応用され、配偶者間だけでない他人 をも含めた子づくりが展開されるようになってきた。ここにも、かつてなかった新し い“母性”のあり方が生まれている。それをどう受け止めるか、女性たちはまた選択 を迫られているのだ。

「生殖テクノロジーの発達はある意味では福音でしょう。私はテクノロジーそのもの を否定する立場ではありません。しかし、問題も隠されています。
アメリカでは受精卵の売買は禁止されています。卵も寄付はできるけれど、売るこ とはできないことになっている。アメリカはご存じのとおり階級差がある国です。お 金持ちはたくさんいますし、すべて自分の欲しいものは手に入れるようになってきて いる。一方、貧しい階級の女性たちは、法律で禁止されていても、お金のために卵や からだを売ることもあります。中国やロシアでは、アメリカに養子縁組みに出すため に、自分の子どもでさえ売ってしまうという事実もあります。
もちろん、どんな方法であれ、不妊が解決できればいいと思う人はいるでしょうし、 卵を提供したり、おなかを貸すことに抵抗のない女性たちはいます。しかし、私はそ こには、資本主義と父権制、テクノロジー至上主義という社会的な側面が背景にある ということを忘れてはならないと思います。
所得によって階級の南北格差が生まれ、お金もちが貧しい女性の卵やからだを使う。 そして技術的にそれが容易にできる世の中になっているからこそ、そのテクノロジー を使うのは当然とされる。しかし、不妊の問題の根幹には、女性が子どもを産む性と して期待される父権制的なイデオロギーが存在しています。
女性たちは、お金持ちであろうと、貧しい階級であろうと、こうした社会システム の中にあり、そうした中で選択肢を与えられ、システムにのっとった選択を迫られて いるのです」




ロスマン教授は、アメリカでベビーM事件が起こったころから、フェミニストとし て代理母について、あるいは生殖医療について意見を求められる場にたくさん出席し てきた。フェミニストとひと口に言っても、さまざまな意見があるが、ロスマン教授 は代理母に反対を唱える立場を貫いている。

「私が代理母に反対する理由のひとつは、妊娠中の母と子の関係性を重視しているか らです。たとえその女性の卵でなく、遺伝的なつながりをもっていないとしても、妊 娠期間をともに過したということは、母親と子どもに深い絆が生まれると、私は考え ています。おなかの中の赤ちゃんを思いやって散歩をしたり、寝る姿勢を変えてみた り、声をかけたり、生活したり。胎児は母親のものであり、だれかに頼まれておなか を貸しているだけという関係ではないはずです。
もちろん私は、『母性本能』という議論には警戒しています。産んだ女性がかなら ずしも育てることを望むとはかぎりませんし、赤ちゃんを養子に出すこともある。け れどそれは、その女性自身の選択です。出産した母親だけが子どもを育てる能力があ るわけではありません。人は性別に限らず、愛情ある子育てをすることはできるので すから。
もうひとつ反対する根拠は、女性のからだは彼女自身のものであり、自己コントロー ルすべきものだということです。これに対しては、妊娠に関する自己決定をするのだ からおなかを貸してもいい、という議論を持ち出されることがあります。しかしこう した議論は、女性を単なる子どもを宿す容器にすぎないと見下した考え方であり、妊 娠を胎児と女性の関係としてではなく、女性が他人に与えるサービスとしてとらえて いることになります」

babycom の取材では、代理母を体験した女性は、子どもをいない人を助けるために 自分にできることをしたと答えてくれた。

「もちろん、子どもがいない人の力になりたいと思う人はいるでしょう。困っている 人をどうやって助けたらいいのか、悩むところです。たとえば歩けない人に杖を、目 の見えない人に盲導犬を提供することはできる。けれど、子どもをもてないことは障 害なのか、という議論をその前にしなければなりません。
女性に子どもを産んでもらい、その子どもを自分の子どもにするという今の代理母 の現状は、かならずビジネスが介在し、契約の上に成り立っています。身分の南北格 差もある。妊娠し、出産することは、女性の健康へのリスクが考えられますし、妊娠 中に築いたおなかの中の赤ちゃんとの絆や母性の感覚を断ち切ることになる。いくら 子どもが欲しいと切実に願っているカップルのためだとしても、ほかに解決する方法 はあるはずです」




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