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第5回:携帯電話とのつきあい方を考え直そう



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携帯電話の電磁波が子どもの脳に与える影響については、第2回コラムで詳しくお伝えしました。子どもたちへの健康リスクを少しでも減らすために、私たち大人はどうしたらよいのでしょうか。

このコラムを参考に携帯電話とのつきあい方を考えてみませんか。


by 上田昌文(NPO法人市民科学研究室)


 電磁波問題はその健康影響が話題の中心です。健康リスクはどの程度のものでどうしたら安全を確保できるのか、電磁波利用のベネフィット(便益)を損なうことなくリスクを抑えるためにどういう対策を施していけばよいのか、について社会で合意をはかり対策を実現していくことが目標になります。ただ、この健康リスクの論点以外にも非常に広い範囲の問題がからんでくる場合があって、携帯電話はその典型例だと思えます。

●世界の33億人が使っている携帯電話

 携帯電話は20世紀の終わりに出現し、瞬く間に世界中に普及した先端技術です。20年ほどで世界の半数以上の人が所有するようになった技術は他に例がありません。2007年末で世界の契約が33億件を突破しています。日本での普及もここ15年ほどでほぼ直線的に増加して、現在では90.5%の人が携帯電話を所有しています。(2009年末の時点での契約者数は、携帯電話106,481,700件 、PHSは4,557,300件で合計111,039,000件 社団法人電気通信事業者協会の資料・図1参照)。

 そして、子どもたちの所有状況は、ともに1万人ほどの子どもを対象にした調査では、全国では「小学生が24.7%、中学生が45.9%で、高校生は95.9%とほぼ全員」(文部科学省2009年2月)、東京都では「小学校(4年生以上)で38.4%、中学校で66.4%、高校で96.2%、特別支援学校で53.8%」(東京都教育委員会2008年7月)となっています。これはおそらく世界的にみても同傾向で、たとえば台湾では「6〜18歳の34.4%、中学生の67%、高校生の89.6%」、英国では「16歳の若者10人のうち9人、小学校の40%以上」といった報告があります。「子どもが親の目を気にしながら家の電話を使う」という時代は遠く過ぎ去った感があります。

 ■図1:携帯電話・PHSの契約者数の推移 
 社団法人電気通信事業者協会の資料より


●携帯電話技術の2つの特徴と問題

 携帯電話の技術における最大の特徴は、次の2点にまとめることができると私は考えています。

(1)健康影響が検証されないままが、短期間に大多数の人々が使うようになったこと

(2)単なる電話では決してなくて、電子情報を介したあらゆるやり取りをどこからでもできるように進化していく“情報万能特性”と、情報レベルで個人が端末と同一化する傾向が究極まですすむ“自己同一化特性”(たとえて言えば、「我携帯を持つ、故に我あり」ということ)を備えていること

(2)は、「携帯端末=進化していく自分」なのですから、携帯電話を使い始めると手離せなくなる大きな理由の一つでしょう。(1)は電磁波問題としてみたときの最大のポイントであり、人類全体でかつてない規模で「マイクロ波を常時浴び続けるとどんな病気になるのか、ならないのか」を生身で実験をしている、ということになります。

 この点については、脳腫瘍の発症との関連が最も懸念されていて、大規模な疫学調査「インターフォン研究」がそれを調べたのですが(『babycom mook Vol.4』及び『babycom Eye子どもと電磁波』でその概要を紹介しています)、「脳腫瘍リスクを高めるとまでは言えないが、関連がないと言い切ることもできない」といった結論になりそうな感じがします。というのも、インターフォン研究を主導し、オーストラリアの研究の責任者であるアームストロング博士(シドニー大学)が2008年の12月8日に行ったインタビューによれば、彼は「携帯電磁波と脳腫瘍との関連は“分からない”と答えることしかできない」ことを強調しているからです。ただし、彼は「長期間の使用によってそのリスクが高まるかもしれないことを示唆するデータがあることは事実であり、その点を考えれば、予防的な対応策をとることが、とりわけ子どもに対しては、望ましいと思う」とも述べています。世界の第一級の研究者から発せられた言葉として、私たちはこれを重く受け止めるべきでしょう。



電磁波コラムINDEX
 ..........今必要な電磁波対策とは

1.経済産業省の電磁界対策

2.子どもに携帯電話を持たせる…

3.IHクッキングヒーターは、安全?!

4.電磁界情報センターをどう利用すべき?

5.携帯電話とのつきあい方を考え直そう





上田昌文さん
NPO「市民科学研究室」代表。
科学技術に関連するさまざまな社会問題に注目して、多くの専門家やグループと連携しながら、市民が必要としている研究、調査をすすめている。
大阪出身。大学では生物学を専攻(分子遺伝学、発生生物学)。英語を使った仕事(教育や翻訳)も多い。




電磁波
 特集:電磁波の健康への影響


欧州各国に見る子どもと携帯電話
 ◯学校で「携帯電話」を学ぶ




電磁波対策
babycom mook Vol.4
特集:これからの電磁波対策


世界の電磁波対策先進国に学ぶ子どもを守るための対策法や、最新情勢をお届けします。ほかにベビーとママの大切なコミュニケーション「ベビー&ママヨガ」、妊娠中から子どもの歯のケアなど、見所満載です。
●子どもたちのために、携帯電話とのつきあい方を考え直したい

 「とりわけ子どもに対しては」が重大な意味を持つのは、電磁波に対する子ども特有の感受性・脆弱性の問題に加えて、携帯電話の使用状況がかなり深刻な様相を示しているからです。「中学生の約2割が携帯電話で一日にメールを50件以上もやり取りしている(一日に100件以上という中学生は7%)」(先の文部科学省調査)、「中学校では通話が1日平均8.3分、サイト利用が35.0分、高校では通話が10.3分、サイトが63.3分」(同東京都)といったデータから見えるのは、携帯電話が、用件・用事があるから電話をかけるというのとは違う、別の意味合いのツールになっていることです。相当数の子どもたちが“携帯依存症”であることもうかがえます。「携帯電話を持ち歩いていないと「不安」になる人が80.9%」(インフォプラント2007年5月、対象はiモードユーザー7038人)という結果もあわせて考えると、よほど上手に早い時期から携帯電話とのつきあい方を指導していくなり規制をかけるなりしない限り、子どもたちの電磁波曝露の量を減らすことは難しいことがわかります。

 学校で、自治体で、家庭で、携帯電話のよりよい使い方・控え方を皆で考え、適切なルールを作り出していくことが今まさに必要です。メーカーや事業者には、過度な宣伝を控えることをはじめ、携帯電話が引き起こしている様々な社会問題にしっかり配慮するよう、そして政府には電磁波曝露を低減するための予防的な措置を打ち立てるよう求めていかねばなりません。携帯電話の契約件数が1000万が超えたのは1996年、それが1億を突破したのは2007年でした。契約件数がほぼ頭打ちになった現在、この技術とどうつきあうべきなのかを、改めてじっくりと考えてみたいものです。

上田昌文(NPO法人市民科学研究室 代表)2009.3.31


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