マタニティと子育てに役立つ栄養学、シーフードベジタリアン

マタニティと育てに役立つ栄養学


2.海と大地のテーブル
子どもの食卓、一日に一度はシーフードを


欧米スタイルの食事が普及し、中高年の糖尿病や子どもの肥満が激増しています。
シリーズ2回目では、その背景を考えながら、なぜ魚食が健康によいといわれているのか、魚と肉の油脂の違いについてお話します。


日本人は魚好き?!

魚食がからだによいワケ

小さなころから魚を食べる食習慣を


取材協力:鈴木たね子(すずき・たねこ)氏

農林水産省研究機関を経て、日本大学教授、国際学院埼玉短期大学教授。大日本水産会おさかな普及学術諮問会議座長、海洋開発審議会委員等を歴任。 現在は、国際学院埼玉短期大学客員教授、おさかなマイスター協会講師。「健康のための食生活」をテーマに、執筆、講演活動をしている。著書に『なぜ、魚は健康にいいと言われるのか?』(成山堂書)、『お魚を毎日食べて健康になる』(キクロス出版)など多数。



「日本人は魚好き」。そんなイメージがあります。でももっと正確にいうと「昭和の頃の日本人の65才以上は魚好き」なのです。というのも最近の年齢別の魚の消費量をみると、高齢になっても魚の摂取量は伸びないのです。歳をとるごとに魚が好きになってゆく、ということはみられなくなりました。
たんぱく質や油脂の摂取を畜産物にたより、日本人の体格は見違えるようになったせいか…なんだかいいことのように思いますが、反面、子どもの肥満や中年の糖尿病の激増などが増えています。


では、なぜ肉だけでは駄目で、魚に重きをおくといいのか。少し栄養学的な話をしておきましょう。
魚というのは栄養学的にいえば、たんぱく質を主成分にしています。たんぱく質を食べるという意味では畜肉も魚肉もその含有量やたんぱく質の栄養価に変わりはありません。違うのはたんぱく質と一緒にとりこむ油脂の質にあります。

豚肉や牛肉に多く含まれている脂には「飽和脂肪酸」という成分が多く、これは主にエネルギーとなります。しかし、とり過ぎれば皮下などに蓄積されて肥満や動脈硬化の原因にもなるのです。また、肉やサラダオイルに多い「リノール酸」という脂肪酸は血液の凝固を促して血管をつまらせ、脳硬塞や脳血栓などを引き起こす原因になります。かたや魚にはEPAやDHAという「α-リノレン酸系」という脂肪酸が含まれていて、血液をサラサラにするように働くのです。このように同じ脂肪酸ながら、肉の油脂と魚の油脂は、まったく逆の性格をもつものなのです。

魚介類の油脂は蓄積脂肪になりにくく、魚肉の脂肪酸には肥満の解消効果があることもあきらかにされています。
肉食の国の人たちは、長い年月を経て、肉をたくさん食べても病気にならない身体の機能を備えているのでしょう。しかし、昔からたんぱく質を魚や大豆からとってきた日本人は、肉を多食するのに適した機能を身体にもっていないのでしょう。無理もありません。肉を沢山食べるようになったのはほんの数十年前の高度経済成長期以降なのですから。


四方を海に囲まれた日本には、魚や貝をとって食べる漁りの文化があります。日本人は320種類くらいの魚介類を食べているという調査もあります。なんとも贅沢な食文化と言えるでしょう。この環境と風土に育まれた日本人の身体は、豊かな四季に育まれた大地の穀物と大豆と野菜、多種多様な海の幸を食べることで健やかになれる。それが自然のことわりとなっています。

とはいえ肉好きの人も悲観することはありません。毎食とり続けなければいいのです。バランスよく肉と魚を食べれば問題ありません。2004年の疫学学会では「魚を一日に2回食べると寿命が伸びる」と発表されています。一日に2回魚を食べるのは手間を考えれば大変かと思いますが、あまり面倒な調理をしなくてすむ刺身や水産加工食品も試してみましょう。

特にお子さんをもつお母さんたちには実践してもらいたいと思うのです。というのも、食習慣というのは成長期までに何を食べたかで固定されるからです。少なくとも一日に一度は、子ども達の食卓に魚を並べてあげる。そんな小さな心構えからシーフードベジタリアン生活をスタートさせてみてください。

(談/鈴木たね子 構成・文/babycom)



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1.シーフードベジタリアン的な食事って?

2.子どもの食卓、一日に一度はシーフード!

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10.幼児向けのシーフードおせちをつくろう

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