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育児と仕事で手いっぱい。でも、みんな頑張って時間をやくりくしています! そんなキャリア・カップルの「仕事と育児と家事とプライベートタイム」にせまる。

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No.6 坂上香(さかがみ かおり)さん

映像ジャーナリスト、大学助教授
1965年生まれ 東京
子ども: 長男 路加 2002年生まれ
パートナーの職業:弁護士
産休・育休:なし
仕事時間:決まっていない
休 暇 :決まっていない
パートナーとの育児分担:保育園の送迎(朝は週3日、夫が送る)
パートナーとの家事分担:やれるときにやれることを
託児状況:保育園
困ったときの育児のサポート:妻と夫、双方の母親。近所の方


09:00





保育園送り
仕事
 水曜日〜金曜日は京都の大学へ出張。
 ほかの日は自宅で編集作業、
 または打ち合わせなどで外出
食事の用意
 家にいる人が分担。
 近所の方がつくってもってきてくれることも
家事 家にいる人が分担
妊娠中に映画制作を準備

映像ジャーナリストとして活躍中の坂上さん。子どもを妊娠する直前に、それまで携わっていたテレビ番組の制作をやめ、フリーランスになりました。テレビ番組の制作当時は、少年犯罪などを追いかけてきた硬派のディレクター。高校を卒業した後、留学していたアメリカでの経験を生かし、アメリカでの取材を元にした番組制作をしていました。

「仕事でいろいろなことがあって、テレビの仕事をやめ、すぐに妊娠しました。妊娠は望んでいたことだったんですが、それでも今後の仕事をどう展開していいのか、迷っていた時期でもありました」
そんな仕事の葛藤を抱えながら、初期には切迫流産に。それを乗り切ったころ、夫がガンになるというショッキングなできごとも。夫が入院治療をしなければならない事態に直面しながら、一方で赤ちゃんを産むための病院探しをし、マタニティ・クラスに参加。その後、夫の母が怪我で入院と、妊娠中は思ってもいなかっためま苦しい毎日が続いたといいます。
「そんな中で、それまで私の仕事を支援してくださっていた女性友だちたちが『好きな映画を撮りなさい』と応援してくれたんです」
それでも映画を撮るためには、多額の資金が必要です。それを寄付として集めることを支援してくれる人たちがあらわれて、妊娠中から次の映画の制作準備にとりかかったと言います。
「寄付を集め、アメリカで取材する準備をすすめました。家族的にも大変な時期だったし、出産予定日より4週間前に妊娠中毒症と診断され、急きょ入院することに。パソコンをもって、入院して、医師や助産師にあきれられたこともあります」

予定日より2週間早く、赤ちゃんが誕生。1868g と小さめだったけれど、元気な赤ちゃんでした。退院すると、坂上さんは自宅で仕事を開始。生後2ケ月のころには、すでに映画の編集作業に入っていたとか。


周囲のサポートを受けながら、仕事と育児を両立

子どもが4ケ月になったころ、ロケでアメリカに行くことに。滞在は長期になる予定。坂上さんは母乳をあげていたので、実家の母に応援を頼み、なんと赤ちゃんと母を連れてカリフォルニアに渡ることを決意します。
「母は私の仕事に協力的で、アメリカへいっしょに行くことを楽しいと感じてくれました。保母の経験があるので、母に任せるのが一番安心だと考えたのです」
子連れのアメリカ行きは、一旦帰国して2度に渡り、帰ってきてからは、編集作業が待ち受けていました。
「今は、ある程度の機材をそろえれば、自宅で編集ができるので助かりました。昼間は子どもを保育園に預けて、夜は子どもを寝かせてから、自宅で作業を続けました。息子は生まれてすぐから、いろいろな方々にみてもらっているので、私がいないときにはぐずったりしない子。でも、私が家で作業をしているとやんちゃをしたりもしますけど」

夫は、平日の夜はほとんど午前0時過ぎの帰宅という超過密スケジュールの弁護士。それでも、週の半分は朝、保育園へ子どもを送ってくれるよきお父さんです。
「彼はほんとうに忙しいので、家事や育児を分担する気持ちは十分にもっているのですが、なにしろ家族と過す時間がほとんどない状態。休みの日も、疲労困ぱいといった様子で、家事を分担する余裕は残念ながらありません」

坂上さんはもうひとつ、大学助教授という顔をもっています。毎週、水曜日から金曜日までは京都の大学で教鞭をとるという忙しい日々。水曜日の朝早く家を出て、帰宅は金曜日の深夜。坂上さんが留守のときは、夫の母か実の母がヘルプに来てくれます。しかも、実の母は静岡から上京してくるのだとか。
「近所の方もとてもよくしてくださいます。息子が『んーーばっちゃん』と呼んでいるほど親しい方で、週半分くらいは、その方が夕飯をつくってもってきてくださるので、とても助かっています」

周囲のサポートがしっかりしているからこそ、フリーでバリバリ仕事を続けることができる。まわりの人とじょうずにつき合っていくことも、仕事を続ける上での技術なのかもしれません。


映画『ライファーズ --終身刑を超えて』完成

テレビ番組の制作をやっていた98年、坂上さんはアメリカの犯罪者やドラッグ、アルコールなどの依存症などの人たちが社会復帰をするためのプログラムを行なう『アメティ』という更生施設の番組を制作しました。そこで『ライファーズ』という存在を知ることになり、今回の映画の制作へと結びついたと言います。

『ライファー』というのは、殺人や強盗などの犯罪を犯し、終身刑になった人々のこと。現在アメリカには13万人のライファーズがいると言われています。そうした人々にとって、『アメティ』の存在は社会復帰するための心の支えになっています。
『ライファーズ』たちは、仮釈放になる人もいますが、一生刑務所から出られない人も。それでも彼らは、刑務所から社会復帰したほかの受刑者たちに、刑務所の中からポジティブなエネルギーを送り続け、応援し、心の支えになっているといいます。
坂上さんのドキュメンタリー作品、『ライファーズ --終身刑を超えて』は、今年完成し、各地で上映会がはじまっています。

取材はロス周辺の、刑務所や危険地域。そこをカメラマンと録音マンといっしょに、果敢に取材し、撮影を続けた坂上さん。女性映像ジャーナリストとしても、かなりハードなテーマを追う彼女が、実は幼い子どもを出産したばかりの母親だったことを知って驚く人も多いのだとか。

幼いころからバイオリンをやり、音大付属の高校に通っていた坂上さんは、映画の音楽にもこだわりました。アメリカ人ミュージシャンがつくったネイティブ系のオリジナル曲は、映画をさらに引き立てています。

『ライファーズ --終身刑を超えて』は、10月、東京の中野の映画館でロードショウ公開されるほか、各地で上映会が展開されます。
また、アメリカのいくつかの映画祭にも出品され、インディペンデント系の映画祭では、海外ドキュメンタリー部門の最優秀賞を受けました。
今後も、全米各地で上映される予定。


坂上さんが犯罪を映像作品のテーマにするようになったのは、留学時代の思いがあるのだとか。
「高校を終えて、アメリカ留学を希望したのは、それまでなんとなく日本で生きにくさを感じていたから。アメリカに行ったときに、居場所があると感じた。それで住みよい世界というものに興味を覚えたんです。それでもアメリカには犯罪が多く、少年犯罪がなんで起きるのか興味を持ちました。犯罪の影には、その本人も気づかない育った環境が強く影響しています。『アメティ』のプログラムでは、そうした子どものころに受けた虐待や、両親の問題が浮き彫りにされる。そうしたことを話すことは辛いのですが、辛抱強く、犯罪者やドラッグ依存症の人たちが話し合っていくうちに、違いに癒されて更生していく。人間は変われるんです。そうしたことがこの映画で表現できればいいと考えてつくりました」

babycom ユーザーのマタニティや、赤ちゃんを産んだばかりの女性たちには重たいテーマかもしれないけれど、人の心の奥に潜む潜在意識は子ども時代につくられるということを考えれば、大きな社会の家族論として見ることができるかもしれません。
また、妊娠中から産後の時期に、ひとりの女性がとり組んできた仕事として見るのも、とても興味深いかも。

上映会を企画して下さる団体やグループを募集中
 『ライファーズ --終身刑を超えて』は、劇場用上映会のビデオを貸し出しています。
 日本各地の団体、グループによる自主上映会大歓迎。
 詳しくは、http://www.cain-j.org/Amity/Lifers/index.html



2004年 10月掲載

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