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第2回:陣痛がきてから/産後|第3回:退院してから/ファミリーヘルパー


第1回レポート:「ドイツの水中出産」 永瀬ライマー桂子さん より

私には5歳、3歳、6ヶ月の子供がいますが、3人とも水中で出産しました。水中出産といっても、まさか私が水の中に潜って出産したわけではありません。出産用に設計された大きめの浴槽に、赤ちゃんが9ヶ月間育った羊水と同じ温度のお湯を入れ、その中で赤ちゃんを産むのです。
私がドイツで体験した、産婦と赤ちゃんにやさしい水中出産を紹介します。


産婦と赤ちゃんにやさしい水中出産

水中出産は昔、エジプトや中米で行われていました。また、ハワイやサモア島、そしてインディアンに先祖を持ついくつかの民族も、水中出産をしていたのだそうです。ヨーロッパでは、1803年にフランスで行われたのが最初と言われています。しかしその後100年以上の間、水中出産がヨーロッパで注目を浴びることはありませんでした。1963年になってソ連で水中出産が再び行われ、1970年代から西ヨーロッパでも徐々に広まりはじめました。

私がドイツで体験した水中出産用の浴槽は、日本の普通のお風呂よりやや大きめの楕円形で、分娩室の真ん中にドーンと設置してありました。中に小さな段がついていて、それを階段にして浴槽に入ったり、そこに座ったりすることができます。また、浴槽の中には手すりもついています。天井からは太いロープ(神社のお賽銭箱のところに下がっているようなものを想像してください)が下がっていて、そのロープを握ってしゃがんだ姿勢をとることもできます。出産後体力の弱っている産婦が楽に浴槽から出られるように、浴槽の一部はドアのように開きます。
お湯の温度は、羊水と同じ37度くらいのぬるめです。浴槽に入る前に、手のひらに納まるくらいの大きさの装置をベルトでお腹の周りに着装します。この装置を通じて、赤ちゃんの心拍と陣痛が測定され、その情報はワイヤレスで陸上にある機械に送られて常時監視されます。

水中出産には、いくつもの優れた点があります。第一に、水中では浮力があるため、産婦は自分の楽な姿勢を自由自在にとることができます。私もしゃがんだり、四つんばいになったり、ひざをついたり、仰向けに寝たり、陣痛の激しさや、赤ちゃんの位置によって、その時々で楽な姿勢をとりました。姿勢によって、天井から下がっている縄を握ったり、助産師さんや夫に支えてらったり、浴槽についている手すりにつかまったりしました。第二に、産婦は暖かいお湯の中でリラックスできるので、陣痛の痛みが和らぐ上、出産にかかる時間が短縮されます。第三にお湯の中で皮膚がやわらかくなるためか、会陰切開の割合も減ります。ドイツの統計では、陸上での出産の場合38%の産婦に会陰切開が必要になるのに対して、水中出産の場合はその半分の19%だそうです。

水中出産は産婦だけでなく、生まれてくる赤ちゃんにとってもやさしい方法です。赤ちゃんはお腹の中の羊水と似た環境に生まれてくるので、ストレスが少ないと言われています。20年以上前、ドイツで水中出産が導入されはじめた頃、水中出産は赤ちゃんの生命を危険にさらすのではないかと心配されました。しかし、赤ちゃんが亡くなったり病気にかかったりする確率は、ベンスベルクの病院の統計によると従来の出産方法と変わらないということです。水の中に生まれたのでは、息ができずにおぼれてしまうのではないか、と気になりますが、これも心配無用。赤ちゃんにはダイビング反射作用が備わっていて、水を飲み込んだりはしません。生まれてから60秒以内に水中から取り出せば、心配はないそうです。赤ちゃんはお湯から顔を出したときに初めて呼吸します。
ただし、誰もが水中出産をできるわけではありません。逆子や多胎妊娠、早産、産婦がエイズや肝炎に感染している場合は、水中出産はできません。また、ドイツでは多くの産婦が無痛分娩を望みますが、この場合、継続的に脊髄に管で麻酔を入れるため、水中出産はできません。
ドイツでは水中出産の人気は年々高まっていて、出産用の浴槽を新しく設置する病院も増えています。2002年には、全出産の10%が水中でした。水中出産施設のある病院では、30%から50%の産婦が水中出産を選んでいるそうです。


まず病院選び

私は最初から水中出産を希望していたわけではありません。第一子を妊娠したとき、色々な出産方法を選ぶことができて、できるだけ自然に赤ちゃんを産める病院がいいと思い、水中出産施設のある病院を選びました。 日本と違ってドイツでは普通、妊娠中に通う婦人科医と出産する病院は違います。妊娠中はかかりつけの婦人科医で検診を受け、出産のときだけ出産・入院施設のある大きな病院に行きます。出産ができる病院の数はあまり多くなく、たとえば私の住むデュッセルドルフ市では5つの病院と、1つのGeburtshausと呼ばれる産院があるだけです。Geburtshausというのは、医師がいない、助産師さんだけの介助で産む施設です。その他、自宅に助産師さんを呼んで産むこともできます。

妊婦は妊娠4ヶ月を過ぎたころから、出産する病院やGeburtshausの情報を集めはじめます。どの病院もInfoabendと呼ばれる説明会を定期的に行っていて、私も夫と2人で色々な病院の説明会に出かけました。Geburtshausでの出産も考えましたが、私自身がへその緒を首に3回巻いて、息をできない状態で生まれてきたので、何かあったときを考えて病院で産むことにしました。帝王切開や会陰切開率が他と比べてやけに高いところは避けました。色々探した挙句、自宅から遠かったのですが、第1子と第2子はケルンの郊外ベンスベルクにある病院を、第3子はデュイスブルクにある病院を選びました。

病院を決めたら、出産予定日の1ヶ月ほど前に一度診察に行きます。かかりつけの婦人科医がそれまでの妊娠の経緯を詳細に記録してくれたMutterpass(母親手帳)を持参し、出産病院はそのデータをチェックします。さらに、どんな出産を望んでいるか話します。病院に行くときだけでなく、妊婦はこのMutterpassを常時携帯するようにと言われています。どこで何が起きても、それまでの妊娠の経緯が分かれば、即座に適切な手当てをできるからです。私が第2子を妊娠中、ベルリンまで泊りがけで旅行したときに出血しましたが、Mutterpassを携帯していたこともあり、事無きを得ました。ベルリンで受けた手当てや胎児の様子もMutterpassに記録され、デュッセルドルフのかかりつけの婦人科医との連絡も万全でした。


助産師さん選び

ドイツでは希望すれば、助産師さんが産後毎日、自宅まで通って母子のケアをしてくれます。出産前にも、何か問題があれば自宅まで往診に来てくれます。私にとって助産師さんは欠かせない存在で、身体の状態だけでなく、精神面でもたいへんお世話になりました。
どの助産師さんにお願いするかは、病院選びと同様に、自宅に近い助産師さんのリストから選びます。まずは電話で話して、感じがよければ自宅まで来てもらいます。自宅で30分ほど話をして、気に入ればその助産師さんに出産前・出産後のケアをお願いします。出産後は、体調や気持ちが安定しない時期なので、気のあう助産師さんを見つけることが肝心です。

出産前のケアでは、第1子のときは、出産がスムーズに進むように、出産1ヶ月前から針を打ちに来てもらいました。第3子のときは、予定日までまだまだなのに陣痛もどきの痛みがしたので、陣痛を防ぐオイルを調合してもらいました。また、予定日1ヶ月前になっても第3子は逆子のままだったのですが、これも助産師さんに教えてもらった体操を毎日したら、1週間後の定期健診では正常の胎位に戻っていました。体操で治らない場合には、もくさ(ドイツ語でもMokusaというので驚きました)で治すのだそうです。このように助産師さんは、自然の力を借りて力強く助けてくれます。大きくなったお腹が切迫して、毎日のように胸焼けに苦しんでいた私の知り合いは、助産師さんにじゃがいものジュースを飲むように言われ、それで胸焼けがおさまったと言っていました。しかし、じゃがいものジュースというのは、どう想像してもまずそうですね。


参考文献
Wikipedia Wassergeburt
Dr. Gerd Eldering ?Eine M?glichkeit zur Selbstbestimmung“. In: Hebammenforum 3/2005, S.154-157.
A. Th?ni, J. Holzner ?Geb?ren im Wasser: Bericht nach 385 Wassergeburten am Krankenhaus Sterzing“. In: Speculum 18 Jahrgang, 2/2000, S.15-18.

2006年 11月 永瀬ライマー桂子

第1回:ドイツの水中出産 TOP|第2回:陣痛がきてから/産後|第3回:退院してから/ファミリーヘルパー


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