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掲載:〜2016年7月31日
babycomインタビュー
みんなのお産
〜39人が語る“お産といのち”
著者:きくちさかえ さん
…DVD付き「みんなのお産」(現代書館2014)を出版されました。
本として出版していますが、メインはDVD「みんなのお産」です。2013年に日本各地をまわり、お産に関わっていらっしゃる39人の方々にお会いして、インタビューをし、その言葉をつなげて映像にしました。
…DVDの編集も担当されたとか。
はい。今回はDVDの企画・撮影・編集を自分で手がけました。最終的な映像編集はプロの方にお願いしましたが。
…本は写真が多くて、とてもきれいな本になっていますね。
本に掲載した写真はすべて私が撮影したものです。過去に行った海外で撮影した写真が中心です。本のレイアウトはグラフィックデザイナーの加藤さよ子さんにお願いして、ビジュアル的にも楽しい本になったと思います。
…DVDを作成しようと思ったきっかけを聞かせて下さい。
一番のきっかけは3.11です。私は数年間、お産に関わる仕事から離れていました。衆議院議員の政策秘書として国会に勤めていたのですが、そのときに3.11が起こったのです。私は議員会館の中で、心配しながらテレビを見ているしかありませんでした。最初に被災地に入ったのは4月下旬で、大船渡にボランティアに行きました。それ以降、知り合いを通じて福島県を少しまわりましたが、勤務をしている間は何もできないもどかしさを感じていました。被災地で生まれた赤ちゃんの報道を見たとき、社会が誕生のニュースを暖かく伝え、人々もまたそのニュースで心が温まっていることに気がついたのです。退職後、2013年に被災地を訪れる機会があり、そのとき宮城県と福島県の方にインタビューをしてまわりました。
…被災地だけでなく、さまざまな方々にインタビューされています。
インタビューした方々のほとんどは、以前からの知り合いの方々です。今、出産関連のトレンドは生殖医療になっていますが、そうした時代に変化してきた今、子どもが生まれるという意味を、改めてみなさんに聞いて、一緒に考えてみたいと思いました。
…DVDのテーマを紹介して下さい。
いくつかのテーマがあります。ひとつは震災です。被災地で生まれた赤ちゃんの話や、福島県飯舘村で牧場を営んでいる牧場長の語る子馬の誕生の話など。大変な局面に合っても、いのちがそこに生まれてくることが、被災地の方々だけでなく、多くの人に希望を与えているということを確認したかったということがあります。
もうひとつは、希望ということにもつながりますが、いのちは巡っているということです。産婦人科医の丹家さんの言葉にありますが、人は病院の中で生まれ、亡くなっていきます。これはひとりの人が生まれて死ぬということだけではなく、人というのは集合的に死に、また集合として新たないのちが生まれてくるということです。そこに社会の循環があり、それが希望になります。社会や国の持続可能性は、新たに子どもが生まれなければ成り立ちません。そんなあたりまえのことが、再確認されたように思います。
…本には印象的な言葉が散りばめられていますね。
39人の方々の印象的な言葉を、ページに大きく配しました。それを読むだけでも、思いや意味が伝わると思います。
とくに印象に残った言葉は、「お産は頭で考えるものではなく、からだで感じるもの」という池川明先生の言葉です。一方で河合蘭さんのいう「帝王切開であっても、体外受精であっても、女性はからだを差し出して産んでいることには変わりない。そういう意味で、あまり変わっていると思わない」という言葉も印象的です。
お産は、専門家の視点から医療や文化という側面で語られることが多くなっていますが、「からだ」はポイントになるキーワードだと、私は思います。小川圭子さんは、「アフリカではお産はスペシャルなことじゃない。動物としてあたりまえ」と言っています。動物としての身体は、今の時代は語られにくい要素ですが、震災のような災害時には、まさにそうした身体がうまく機能しなければ乗り越えることはできません。医療技術の進歩とともに、防災としてのお産をどう考えるかということも、今後の社会的な課題のひとつではないでしょうか。
…今後は、各地でDVDの上映会を予定されています。
みなさんの手によって上映会はすでに各地ではじまっています。私自身が上映会に出向いて、参加して下さった人たちと対話していければと願っています。上映会を開催して下さる団体やグループの方がいらっしゃったら、うかがいますのでぜひお声がけ下さい。
…ありがとうございました。
DVD付「みんなのお産 〜39人が語る“お産といのち”」きくち さかえ (著)
お産という言葉から、あなたは何をイメージするでしょうか。
医療、生殖、文化。あるいは妊婦や赤ちゃん。陣痛の痛みや不安などを思い浮かべる人もいるかもしれません。少子化社会を反映して、毎日のように生殖や出産関連のニュースが報道されています。科学技術の進歩に伴って、生殖や出産にも先端技術が投入され、そうした技術が少子化対策のひとつとして語られています。
一方で、東日本大震災の直後、被災地で生まれた赤ちゃんのことが新聞やテレビで報道されました。電気や水道が止まった中で、民家や避難所でひっそりと生まれた赤ちゃんの姿です。それは、震災を体験した人々の心に光を灯すニュースとして届けられました。そこには「新しいいのちは人々に希望を与える」、とてもシンプルなメッセージが込められていました。
宮城県石巻市で被災した荒木さんは、「いっぱい亡くなった方がいたけれど、いっぱい生まれてきた赤ちゃんがいた。その赤ちゃんたちが元気をくれた」と話しています。福島県飯舘村の牧場の細川さんは、震災から3年半経った今も、生まれてくる子馬は「夢と希望」と語ります。
DVD「みんなのお産」は、お産に関わる39人の人々にインタビューをした記録映像です。ほかにも、さまざまな言葉が綴られています。
「お産は頭で考えることではなく、からだで感じるもの」
「人が生まれるということは、奇跡的なこと」
「ひとりひとり違っていて、美しい」
「死んで生まれて。いのちは巡っている」
「みんなのお産」というタイトルには、子どもが生まれることの意味をみんなで共有し、子どもが生まれやすい環境をどのように整えていくかというその方法を社会全体で考えていけたら、という思いが込められています。さまざまな立場の人たちが、いま改めてお産について考える機会をあたえてくれる1冊。
●出演者(敬省略)
ミシェル・オダン(医師)/飯村ブレット(バースエデュケーター)/吉田美穂子(クローバーの会代表)/大池さおり(グラフィックデザイナー)/竹村絵実(サラママヨガ代表)/プリチャード麻美(バーストーク主宰)/小野田レイ(マタニティーアドバイザー)/徳廣直子(きょうとお産といのちの会代表)/光畑由佳(モーハウス代表)/小川圭子(助産院いのち輝かせ屋代表)/伊藤朋子(とも子助産院院長)/小田嶋清美(助産師)/荒木裕美(NPO ベビースマイル石巻代表)/早乙女智子(産婦人科医)/池川 明(産婦人科医)/信友浩一(医師)/中根直子(助産師・日赤医療センター)/大牟田智子(春日助産院院長)/松岡悦子(奈良女子大学教授)/河合 蘭(出産ジャーナリスト)/三宅はつえ(助産師)/沖野 幸(助産師)/田中寧子(吉村医院院長)/齋藤麻紀子(Umi のいえ代表)/大谷タカコ(大谷助産院院長)/矢島床子(矢島助産院院長)/小林由枝(野ノ花助産院院長)/毛利種子(毛利助産所)/オンドレイ・ランダ(パフォーマー)
狩野蕗子(ダンサー)/細川徳栄(飯舘村細川牧場長)/丹家 歩(産婦人科医)/毛利多恵子(毛利助産所所長)/水戸川真由美(公益財団法人日本ダウン症協会理事)/白井千晶(静岡大学)/大葉ナナコ(公益社団法人誕生学協会代表理事)/長谷川 宏(哲学者)/ウルフ・シーヘンヒューベル(医師)/吉村 正(産婦人科医・元吉村医院院長)
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